全体概要
本セミナーは、「Project Ara」というGoogleのモジュール型スマートフォン・プロジェクトを中心軸に据えながら、21世紀の「ものづくり」が根本的な変革を迎えつつあるという命題を多角的に論証するものです。
背景として講師が最初に提示するのは、20世紀末から始まったインターネットのグローバル化と、Google・Amazon・Apple・Facebook・Microsoftといった巨大クラウド企業群の台頭です [p.2, p.13]。現在、携帯電話の世界普及率は96.2%に達し、スマートフォン利用者は約21億人にのぼります [p.17]。10年後には世界の携帯電話がスマートフォンに置き換わり、70億人がインターネットにつながる「Global Network」の時代が到来するという見通し——それが「Next Billions」と呼ばれる概念です [p.20]。
この変化を前提に、セミナーは「Internet of Things(IoT)」というバズワードを批判的に検討します。講師は、これからのインターネットの最重要変化は「ヒトのインターネット」の拡大にあり、IoTが喧伝するような「モノ中心」の語り方では本質を見誤ると主張します [p.25]。むしろ重要な視座は「Cyber-Physical System(CPS)」——経済の生産・流通・消費の全過程をネットワークへ包摂するという展望です [p.29]。
この文脈で取り上げられるのが、ドイツの「INDUSTRIE 4.0」、アメリカの「Advanced Manufacturing Partnership」、中国の第12期5カ年計画という三国の製造業変革戦略です [p.61〜p.103]。蒸気機関・電気・ITに続く「第四次産業革命」として、サイバー空間と物理的生産が融合するCPSが位置づけられます [p.65]。
そして核心へと至ります。Project Araは、スマートフォンをモジュール化し、50ドルという超低価格で提供することでNext Billionsを実現しようとするプロジェクトです [p.104]。さらに重要なのは、モジュール開発ツール「Metamorphosys」をオープンソースで無償提供し、3DプリンターメーカーのSystems社と連携して分散・民主化された製造エコシステムを構築しようとしている点です [p.108, p.112]。Local MotorsやGeneral Electricの事例も交えながら、「ものづくりはデジタル化され、分散化され、民主化される」という未来像が描かれます [p.155, p.163]。本セミナーは、その最前線にProject Araが立つという大きな歴史的期待で締めくくられます [p.172]。
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講義のロードマップ
ここでは、セミナーの講演資料がどのようなパートから構成されているかを示します。また、それぞれのパートのポイントを紹介します。
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■ Part 1: クラウドとグローバルネットワークの成立
21世紀初頭に出現した巨大分散システム群(クラウド)が現代ITを領導しており、その延長上にスマートフォンの爆発的普及とGlobal Networkの成立がある、という現状認識を確立します。「Next Billions」という概念を通じ、今後10年で40数億人が新たにスマートフォンを持つという世界史的変化の規模を示します [p.2, p.20]。
■ Part 2: 「Internet of Things」の批判的検討とCyber-Physical Systemへ
IoTというバズワードの限界を指摘し、より本質的な概念として「Cyber-Physical System(CPS)」を提示します。インターネットの本質は引き続き「ヒトのインターネット」であり、経済の全過程をネットワークへ包摂することこそが真の課題であると論じます [p.23, p.25, p.29]。
■ Part 3: 各国の製造業変革戦略——ドイツ・アメリカ・中国
製造業の変革をめぐるグローバルな競争の実態を、ドイツ「INDUSTRIE 4.0」・アメリカ「Advanced Manufacturing Partnership」・中国第12期5カ年計画の三軸で描きます。IT技術と製造技術の統合が「第四次産業革命」をもたらすという共通認識が、国家戦略レベルで展開されていることを示します [p.61〜p.103]。
■ Part 4: Project Araと「ものづくり」ツールの民主化
Project Araのモジュール型スマートフォン構想を軸に、オープンソースの設計ツール「Metamorphosys」と3Dプリンターの組み合わせが、従来の製造業エコシステムを根本から変える可能性を論じます。ソフトウェア世界でのEclipseが果たした役割を「ものづくり」の世界で果たすという比喩が核心です [p.108]。
■ Part 5: 3Dプリンターと新しいものづくりの実例
3Dプリンター技術が「プロトタイプから量産まで」「プラスチックから金属まで」と適用領域を急拡大しており、航空宇宙産業・自動車産業・国立研究所レベルで実用化が進んでいる現実を豊富な事例で示します [p.114, p.117]。
■ Part 6: General Electricの取り組みと「ものづくり」の変革宣言
世界最大の製造業企業GEが3Dプリンター工場への大規模投資・クラウドを活用したグローバルなパーツ開発プロジェクト・Local Motorsとの「FirstBuild」プラットフォーム構築など、驚くほど大胆な変革戦略を展開している実態を紹介します [p.155, p.160]。
■ Part 7: Project Araの歴史的位置づけと日本の取り組み
第一次産業革命の綿製品、第二次の自動車のように、生産の大変革は最もコモディティ化した商品の場で起きるという歴史法則を援用し、21世紀においてその役割をスマートフォン——すなわちProject Araが担う可能性を論じます [p.164]。日本の経産省・総務省の白書も参照しつつ、日本の立ち位置を確認します [p.173〜p.192]。