紙と鉛筆で学ぶ量子コンピュータ入門演習

目次

2019/04/21 「紙と鉛筆で学ぶ量子コンピュータ入門演習」へのお誘い

このセミナーは、2017年、2018年に開催され、好評だった『紙と鉛筆で学ぶ量子情報理論基礎演習』のタイトルを『紙と鉛筆で学ぶ量子コンピュータ入門』に改めたものです。同じタイトルで、何度かセミナーを開催しました。画像は、2019年2月のものです。


量子コンピュータについての関心が高まっています。
ただ、なかなか近づき難そうな印象を持っておられる方も多いと思います。

それには理由があります。それは、ほとんどの人は、いままでどこでも、量子コンピュータについて学んだことがないからです。量子コンピュータは、その基礎から学べば、決して難しいものではないと、丸山は考えています。

ただ、量子コンピュータの基礎を理解するには、準備が必要です。その一番の近道は、高校で習う程度の易しさの簡単な行列の計算になれることだと考えています。6時間ほどの演習で、その基礎は習得できます。

量子コンピュータの振る舞いを理解するには、本を読んだり人の話を聞くだけではなく、実際に自分の頭で考えて自分の手を使って、具体的には必要な「計算」を行なってみることが大事だと考えています。本セミナーが、「紙と鉛筆で学ぶ」とタイトルに掲げているのは、そうした考えからです。

基礎がわかれば、量子コンピュータの理解は、飛躍的に広がります。逆に言えば、そこを通過しなくては、量子コンピュータや量子アルゴリズムを理解することは、とても難しくなります。

本セミナーには、すでに、延べで350名近くの人が参加しています。
あなたも、参加して、量子コンピュータの基礎を学びませんか?

Part I 「量子論の成立と発展」

Part I 概説

量子の世界 -- 実験で明らかになったこと

20世紀の初め、アインシュタインは、光を金属に当てると電子が飛び出すという光電効果の現象が、光を波と考えては説明できず、光を波長に比例したエネルギーをもつ粒子だと考えると説明できることを示す。
粒子である電子も、二重スリットで干渉縞を示し、粒子性と波動性の二つの性質を持つことが明らかになる。

量子論の成立-- 重ね合わせと観測の確率解釈

20世紀の20年代、シュレジンガー、ハイゼンベルグ、ディラックらが、これらの実験結果を説明できる理論を提出し、量子論が成立する。その後、フォン・ノイマンが、その数学的・形式的な定式化を完成する。

量子論の発展-- 量子もつれ エンタングルメントの発見

重力を一般相対性理論で時空の性質として説明することに成功したアインシュタインは、量子論に満足せず、1935年、量子の「もつれ合い」という奇妙な現象を発見する。
「量子もつれ」は、量子のあいだに特別の相関関係が生まれる現象である。アインシュタインは、量子論の矛盾を示すものとして、これにに注目していた。

物理学の現在

量子コンピュータの話題とは別に、物理学の中で、量子情報理論に対する関心が高まっている。

Part I 講演資料 (ダウンロード

Part II 「qubitを理解する三つの原理」

Part II 概説

量子力学と量子情報理論

量子力学は、物理学の一分野である。それは、自然の実在的な物質を対象として、物質の運動法則の解明を目指す。
量子ゲート型の量子コンピュータの基礎理論に限るならば、それが主要な対象としているのは、二つの状態の重ね合わせであるqubitから構成される抽象的な系である。その理論構造は、比較的、単純なものである。小論が扱うのは、その範囲である。
量子情報理論は、量子論から派生したものである。ただ、量子情報理論の応用は、量子ゲート型の量子コンピュータの基礎に限られているわけではない。
近年の物理学では、ブラックホールの情報問題や、エンタングルメントのエントロピー論が、大きな関心を集めている。それは、量子情報理論を基礎理論として、物理学を再構成しようとする流れが生まれているように見える。

qubitを理解する三つの原理

ここでは、問題を大幅に単純化して、次の三つの原理で、量子コンピュータの基礎を述べて見ようと思う。

  1. 重ね合わせの原理
  2. 観測の原理
  3. ユニタリー発展の原理

Part II 講演資料(ダウンロード

Part II 解説動画

重ね合わせの原理

ユニタリー発展の原理

観測の原理

量子コンピュータを理解するのに、なぜベクトルと行列の計算が必要なのか?

量子の状態は、ベクトルとして表現される。
量子の状態の変化は、ベクトルの変化として表現される。
あるベクトルを他のベクトルに変化させる作用を持つものを「演算子」という。
演算子は、行列で表現される。

量子の状態Aが状態Bに変わったとしよう。それは、量子の状態ベクトル|A>が状態ベクトル|B>に変わったということ。
この変化を引き起こした演算子をUとすると、 |B> = U(|A>) = U|A>
と書くことができる。ここで、|A>, |B>はベクトルで、Uは行列である。

Part II-2 「重ね合わせの記述とket記法」

Part II-2 概説

ここで学ぶこと

  1. 量子の状態は、複素ベクトルの重ね合わせで表現される。
  2. 量子の状態の記述には、ket記法が極めて有用である。
  3. <bra|ket>で内積を、|ket><bra|で外積を表す。

内積のBraとKetでの表現

正規直交基底  

成分を取り出す

外積演算子

Part II-2 講演資料 (ダウンロード

Part II-2 解説動画

内積と正規直交基底

線形演算子と行列

Part III 「観測とエルミート演算子」

Part III 概説

ここで学ぶこと

  1. 線形演算子は、行列で表現される。
  2. H=H† である時、Hをエルミート行列という。
  3. エルミート演算子の固有値は、実数である。
  4. エルミート演算子の固有ベクトルは直交基底をなす。
  5. 正規行列のスペクトル分解
  6. 観測値の平均は、<A|L|A>で与えられる。

Qubitの観測

線形演算子

固有ベクトルと固有値

エルミート演算子

正規行列とスペクトル分解

観測の期待値

Part III 講演資料 (ダウンロード

Part III 解説動画

観測と射影演算子

エルミート演算子とユニタリ演算子

Part IV 「量子の状態変化とユニタリ演算子」

Part IV 概説

ユニタリ行列

スペクトル分解の応用

時間発展の演算子

Part IV 講演資料 (ダウンロード

Part IV 解説動画

スペクトル分解定理

Part V 「n-qubit システムとしての量子回路」

Part V 概説

ここで学ぶこと

  1. 量子の状態は、ユニタリ変換で変化する。
  2. 量子ゲートとは、数学的なユニタリ変換を「物理化」したものである。
  3. 直列に接続された量子ゲートの作用は、対応するユニタリ行列の積で表現できる。
  4. 並列に接続された量子ゲートの作用は、対応するユニタリ行列のテンソル積で表現できる。
  5. Bell State ゲートについて

1-qubit ゲート

ゲートを直列に組み合わせる

2-qubitのゲート

テンソル積 -- 独立した二つのシステムを一つのシステムと考える

CNOTとテンソル積

ゲートを並列に組み合わせる

Part III 講演資料 (ダウンロード

Part VI 「エンタングルメント」

Part VI 概説

エンタングルメント

部分的な観測

Bell State ゲート

Bell State ゲートの働きを暗算で計算する

No Clone 定理

Part VI 講演資料 (ダウンロード

演習問題解答

次のステップへ

ケット記法に習熟する 「ケット |k> で理解する量子の世界」

量子ゲートでエンタングルメントをハンドルする 「量子ゲートで学ぶエンタングルメント」

密度行列を使う 「密度行列 ρ で理解する量子の世界」