ケット |k> で理解する量子の世界
2020/06/20 マルレク基礎「ケット |k> で理解する量子の世界」概要
今回は、量子論を理解するのに必要な数学 -- 線形代数の話を、ケット記法を使ってしようと思います。ケット記法は、量子論の最も標準的で基本的なツールです。ケット記法を理解することが、量子の世界を数学的に理解する第一歩になります。
量子論を学ぼうとして、ケット記法でつまづいた人も少なくないと思います。確かに、最初は、ケット記法は奇妙ものにうつるかもしれません(線形代数の基礎を既に学習している人にとっては、むしろ)。そういう人に、量子論を学ぶ上で、ケット記法を学んでほしいと思っています。それは、見かけほど、奇妙でも難しいものでもありません。それが今回のセミナーの目標です。
なぜ、抽象的に見える数学 -- 線形代数が、物理の理論である量子論に必要なのでしょうか?それは、これらの数学が、具体的な物理的意味を持つからです。
量子論は、基本的には、量子の状態がベクトルで表現されるということを出発点にしています。これは、数学的なベクトルの定義とは独立な物理学的な主張です。ケット|A>は数学的には、単なるベクトルのことですが、それは量子の状態を表現している物理的な概念だと考えることができます。
今回のテーマの一つは、「観測」の問題なのですが、「観測」が数学的な問題ではなく、物理的な問題であることは明らかだと思います。量子の状態の「観測」では、我々の常識に反していろいろ奇妙なことが起きます。こうした不思議な物理的な現象を数学的に記述するモデルが存在します。こでもケット記法は大きな役割を果たします。