数理哲学への招待

2018/04/25 MaruLabo数理ナイト「数理哲学への招待」概要

ディープラーニングや量子コンピュータなど、新しいIT技術をすこし詳しく知ろうとすると、いろんな数学的知識が要求されることがあります。そこで立ち止まってしまう人も多いのではと思っています。それは、残念なことですが、ただ、そのことに、もっぱら小言を言いたいわけではありません。というのも、数学の世界は、プログラミング=アルゴリズムの世界に隣接して、そのちょっと先にひろがっているからです。

社会が複雑になり、我々の社会的活動が多様になり、また、我々の認識の対象が量子の世界から宇宙まで拡大するにつれ、我々と数学との接点は、ますます広がっていきます。現代の社会的活動の大きな部分をIT技術が占めていますので、ITと数学との接点が広がり深まるのは、ある意味、不可避のことです。

今度のセミナーの目標は、数学が面白いことを感じてもらうというものにしようと思っています。

数学を無味乾燥なつまらない学問だと思っている人は、少なくないと思います。大学受験の世界では、数学は、決して人気の科目ではありません。また、「数学なんて、生きていくのに役に立つの?」と「根本的」な疑問を持っている少年・少女達もたくさんいるでしょう。

ただ、第一に、数学の歴史に注目すれば、そこには、面白いドラマがたくさんあります。それは、それまでの通念がひっくりかえる意想天外のどんでん返しの連続です。登場人物たちも、なかなか魅力的です。

第二に、数学は、もちろん、最終的には数学的形式をまとうのですが、それは完成形です。数学の研究をドライブしているのは、「謎」を見つけて、それを解決したいと思う知的好奇心です。その問題意識自体は、数学の形式にによらなくても定式化できて、そのいくつかは、誰でも、理解すること、考えることは可能なのものがあります。それは、いわば、「哲学」的な問題です。知的好奇心は、数学はどういう学問なのかという数学の基礎自体にも向かいます。面白いのは、こうした分野では特に、数学的関心と哲学的関心は、結びつきます。

第三に、おそらく、物理学の基礎の部分でも、同じこと、哲学的問題意識が学問にとっては有用だという現象がが起きていると思います。「数学が役に立つのか?」という、先の疑問に対する、もっとも有力な回答は、数学が、実在の物質界についての学問である物理の世界で、役に立っていることだと僕は考えています。これも、考えると、本当は不思議なことです。

セミナーの冒頭、参加者に簡単な「思考実験」をしてもらおうと思います。それには、特別な数学的知識は、必要ありません。

講演資料 「数理哲学への招待」

数理哲学への招待 -- 思考実験編


数理哲学への招待 -- 数学史編