Deep Dive Audio 20251025
マルレク「マグニチュード論の展開」の音声概要をまとめたページです。
Deep Dive Audio
Lawvereの「一般化された距離」とは何か
現代のマグニチュード論の出発点の一つとなった Lawvereの「一般化された距離空間」とは何かの概説です。元の論文は、今から50年以上前の1973年のものです。
d(a,b)で「aからbの距離」を表すと、この空間ではd(a,b) ≠ d(b,a) になります。すなわち、「aからbの距離」は、「bからaの距離」とは等しくなりません。例えていえば、「aからbの距離」を「aからbに移動するのに、どれくらい疲れるのか」で測れば、ふもとの地点aから山の頂上bまでの登りの「距離」は、頂上からbからふもとaまでの下りの「距離」は、等しくならないのと同じです。
また、この空間では、d(a,b) = 0 から a = b を導くことができません。互いの距離は 0 だということから、その二つが同じものだとは言えないのです。
こうした一見すると奇妙な性質を持つ空間が、意味の理解に役立つかもしれないという研究が進んでいます。
カテゴリー論を真剣に考えることの意味
カテゴリー論という共通の武器を得て、生成AI・大規模言語モデル・量子コンピュータから数学の基礎に至るまで、さまざまな分野で同時多発的に進行する研究の展開は、21世紀の科学・技術の発展の大きな特徴だと僕は考えています。
20世紀の後半に、こうしたカテゴリー論の応用のビジョンを明確に示した哲学者がLawvereです。そうしたビジョンのマニフェストと呼ぶべきものが、1986年のLawvereの”Taking Categories Seriously”という論文です。この音声概要は、この論文を紹介したものです。
音声だと分かりにくいところがあります。「かんかくちょう」というのは、「カン拡張」 Kan extensionのことで、数学者Kanが行ったカテゴリー論の重要な再構成の試みを指しています。僕の「カテゴリー論基礎」のセミナーでは、まだ取り上げたことありません。
現在進行中のセミナーで取り上げているマグニチュード論の展開は、まさに、 LLMと意味の理論の分野でのLawvereのビジョンの具体化と考えることができます。
次の二つの音声概要は、以前に公開済みのものです。
LLMの謎にカテゴリー論で迫る
この概要では、今度の連続セミナーで中心的に取り上げることになる、Bradleyらの問題意識とカテゴリー論を利用した取り組みを主に紹介しています。
彼女の近年の研究の成果である「マグニチュード」論がどのようなものか、どのような役割が期待されているのかについて、わかりやすい解説になっています。
LLMのテキスト・データに隠された構造を探る
この概要も、Bradleyの問題意識の要約になっています。重複はありますが、重要なことなので、色々な切り口で語られるのはいいかなと思います。
米田の補題の解釈が少し詳しく語られています。また、、LLMに与えられるテキスト・データ自身に構造が内在しているという視点は大事なポイントだと思います。

