人工知能と量子コンピュータ

2018/11/19 「人工知能と量子コンピュータ -- NP-完全問題とその含意」概説

 量子コンピュータが、人間の認識の「限界」をどのように拡大するかは、人工知能の未来を考える上で、重要な問題です。

 BQP(量子コンピュータで多項式時間で解ける問題のクラス)が、P(古典的コンピュータで多項式時間で解ける問題のクラス)を完全に包含していることの発見と、その応用としてのShorの素因数分解アルゴリズムの発見は、今なお、量子複雑性理論と量子アルゴリズムの金字塔です。

 残念なことに、多くの数学者は、複雑性の階層の中のNP完全のクラスは、BQPに含まれないだろうと考えています。

 ただ、NP完全の問題に、量子コンピュータが、「近似的」に取り組むことは可能です。講演では、こうした「量子最適化」と呼ばれる問題群(QAOAあるいはVQE)の取り組みを紹介しようと思います。

 新しい量子アルゴリズムの発展はめざましいものがあるのですが、講演では、もう一つのトピックとして、これらの取り組みで多く利用されている、QRAM(量子ランダムアクセスメモリー)というアーキテクチャーを紹介します。

資料の構成

Part INP-完全問題とその含意

  • 人間と機械の「認識可能性」の認識の拡大
  • NP-完全問題 手におえない問題の存在
  • Cook-Levin Theorem: SATはNP完全である
    • Karp: 多項式時間で還元可能なNP完全問題
    • Clique 問題
    • Graph Coloring 問題
  • Hamiltonian Path 問題
  • 実際に実装されているNP-完全問題のプログラム
  • 量子断熱コンピュータとNP-完全問題
  • 量子断熱コンピュータと量子ゲート型コンピュータとの「等価性」

Part II広がる量子アルゴリズムの世界-- BQP-完全問題とQRAM 

  • 量子組み合わせ最適化 QAOAとVQE
  • 量子アニーリング
  • 量子ディープラーニング
  • QRAMと量子逆行列変換 HHLアルゴリズム
  • QRAMとは何か?
  • 半正定値プログラミング
  • 量子リコメンデーション

講演資料 (ダウンロード