量子コンピュータ入門

2020/10/17 マルレク基礎 「量子コンピュータ入門」概要
量子コンピュータに対する関心は確実に広がっています。もっとも、量子コンピュータで今日・明日にも世界が変わるわけではありません。ただ、10年-20年のスパンで考えれば、21世紀半ばの世界が、量子技術の活用によって大きく変わるのは確実だと僕は考えています。
「将来重要になるかもしれないが、今は役に立たないのも確実。」
IT技術者が、量子コンピュータを学ぶことに歯痒さを感じるのは、そういう思いがあるからだと思います。また、そうした判断が間違っているわけでもありません。
ただ留意して欲しいことがあります。
一つは、21世紀初頭 ITの世界で進行したデータセンターからクラウドへ、PCからモバイルへの移行は、大きな技術的・ビジネス的飛躍でしたが、ある意味では技術的には連続していました。多くのIT技術者はその変化に追従し、ある場合にはその変化を牽引することが出来ました。ただ量子技術の場合には、原理的なレベルで非連続さが存在します。技術的な準備が必要です。
もう一つは、量子コンピュータ関連の理論と技術は、日々、「進化」しているということです。それは、いつまでも未完成で非現実的な技術にとどまっているわけではないのです。関心を継続するのには、現在の到達点を知ることが一番だと思います。
今回のセミナーは、量子コンピュータをはじめて学ぶ人を念頭においています。
セミナーの第一部では、量子コンピュータがどのような原理に基づいているのかを、量子ビット・量子ゲートといった基本的な概念から解説したいと思います。
「量子コンピュータ入門」 資料の構成
Part I 量子コンピュータの基礎
- 量子ビット -- 量子の状態をベクトルで表現する
- 量子ゲート -- 量子の状態変化を行列で表現する
- 量子回路 -- 複数の量子の状態をテンソルで表現する
- 量子の不思議 1 ? 量子の状態は観測できない?
- 量子の不思議 2 ? エンタングルメント
Part II アダマール・ゲートで学ぶ量子アルゴリズムの基礎
- 量子コインと量子暗号
- Quantum Parallelism
- エンタングルメントと量子通信
Part III 量子コンピュータの歴史と到達点
- ファインマン 1982年 自然をシミレートする量子コンピュータ
- ショア 1994年 量子アルゴリズムの力
- ローズ (D-Wave) 2011年 量子コンピュータ実現の困難さと新しい道
- Google (マルチネス) 2019年 量子超越性の実証
Part IV 量子コンピュータと人工知能論
- 機械は考えることができるか?
- 現代の生命観 -- 分子機械としての人間
- 機械の知能の計算主義モデル
- 人間と機械の知能の限界を考える
- 複雑性理論の新しい知見
- 人間と機械の「共生」について