エンタングルする認識

目次

2022年 10月29日 エンタングルメント・セミナーを開催します。

本セミナーは、録画されたコンテンツの配信で、生放送ではありません。
この日のこの時間帯の都合が悪い人も、申し込みいただければ、いつでも都合のいい時間に、何回でも講演ビデオを利用いただけます。表記の開催日時「10/29 19:00~」は、コンテンツの配信開始の日時を表しています。

10/29 マルレク「エンタングルする自然 — 「逆理」から「原理」へ」申込はこちら

10月29日 マルレク「エンタングルする自然 -- 「逆理」から「原理」へ」を開催します。
お申し込みは、次のページからお願いします。https://entangled-nature.peatix.com/

今回のマルレクのテーマは「量子エンタングルメント=量子もつれ」です。2022年のノーベル物理学賞は、アラン・アスペ、ジョン・クラウザー、アントン・ツァイリンガーの三人に与えられました。三人は、いずれも「エンタングルメント」にかかわる実証的な実験の分野で大きな仕事をしてきた人たちです。三人のノーベル賞受賞をきっかけに、量子の世界の不思議な現象である「量子エンタングルメント」に対する関心が高まることを期待しています。

エンタングルメントは、現代では量子の世界ひいては自然のもっとも基本的な現象だと考えられています。今回のセミナーでは、「エンタングルする自然」という新しい自然観の成立を、一つのドラマとして紹介しようと思います。

アインシュタインが今から80年以上前に、量子論の矛盾を示す「逆理」として提示したこの現象は、当時の量子論の主流派であったボーアたちからは、黙殺されました。ベルは、ボーアたちとは異なる立場からこの問題を考え、量子論の正しさを理論的に確立します。

21世紀になって、マルデセーナやサスキンドは、量子論と相対論の統一を目指す取り組みの中で、エンタングルメントの重要性に改めて気づきます。先にも述べたように、エンタングルメントは、現代では、量子論の重要な「原理」の一つとして扱われているのです。

「逆理から原理へ」というタイトルは、そのことを指しています。

今回のセミナーは、以前マルレクでおこなった「楽しい科学 -- エンタングルする自然」というセミナーhttps://www.marulabo.net/docs/science-entanglement/  と基本的には同じ内容にしようと思っています。「楽しい科学」というタイトルが示すように、科学が好きな多くの人に、自然観の変化の大きな流れとエンタングルメントの重要性を、楽しく伝えられればと思っています。

前回のセミナーとの違いは、主に、次の二点にあります。ご期待ください。

● エンタングルメントについて、ベルの果たした大きな役割を、少し詳しく触れたいと思っています。( ベルが、ノーベル賞をもらうことはありませんでした。)

● 「量子コンピュータ」以上に実用化のスピードが速いと期待されている「量子通信」の中核技術である「量子テレポーテーション」について、解説と現状の紹介を追加します。

(このセミナーは、今回のノーベル賞受賞者の業績を個々に紹介している訳ではありません。それについては、MaruLaboの次のページを参照ください。「エンタングルメント関連ページ」https://www.marulabo.net/marulabo-entanglement/ )

「エンタングルする認識」ページ更新しました

MaruLabo「エンタングルする認識」ページを更新しました。https://www.marulabo.net/docs/philosopy/

10/29マルレク「エンタングルする自然 ver. 2」の開催に合わせたものです。
https://www.marulabo.net/docs/science-entanglement2/
10/29セミナーの理解に、参照ください。

「エンタングルする認識」「はじめに」から

「エンタングルする自然」「エンタングルする認識」二つのページは関連しています。

「エンタングルする自然」のページは、21世紀の自然観の中核に「エンタングルする自然」という自然観が生まれていることを紹介しています。「エンタングルする認識」のページは、こうした自然観を、我々がどのように形成・獲得してきたかをみようとしたものです。

「自然の認識」は、「自然」と「認識」という二つの項からできています。ただ、その二つの項はまったく切り離された別々のものではありません。「自然」が新しい相貌の下に立ち現れ始めたということは、「認識」の飛躍が起きつつあるということに他なりません。それは、人間が新しい認識のスタイルを獲得しつつあることを意味します。

僕は、エンタングルメントの認識が、現時点での人間の認識能力の飛躍の中心舞台だと考えています。

小論は、こうした進行中の転換を、1964年のベルの定理(第一部)、1985-6年の対話型証明の登場(第二部)、そして2020年のMIP*=RE定理(第四部)の三つのトピックを中心に概観したものです。これらは、1930年代のアインシュタイン、チューリング、フォン・ノイマンの仕事に淵源するものです。

このページの各Partの関係については、スライドの図を参考にしてください。

量子コンピュター(第三部)のトピックは、「自然」と「人間の認識」という二項のコンテキストからではなく、「自然と人間と機械」という三項の関係として捉えるのがいいと考えています。

(このあたりの問題については、機械の利用と認識能力の拡大を扱った次のショートムービーをご覧ください。https://youtu.be/j8flZDzL6yA?list=PLQIrJ0f9gMcMlJbm6pdZKdXwrzWSGyeqL )

認識の「飛躍」と言いましたが、大きな飛躍には、歴史的に先行するやはり大きな飛躍があります。興味深いのは、歴史的飛躍を行った発見者自身(例えばアインシュタイン)でさえ、その飛躍がその後の歴史的飛躍の中で果たす役割を予見できないことがあるということです。その役割と意味は、現在から過去を見るときに、はっきりと浮かび上がります。

 「ミネルバのフクロウは黄昏に飛び立つ」

自然科学は、自然の哲学から分離・発展したものですが、科学への「哲学的」アプローチも、少なくとも過去から現在の到達点をオーバービューするのには、意味があるのではと考えています。

( 2021/04/10 楽しい哲学 )

講演資料「エンタングルする認識 -- MIP*=REへ」(ダウンロード)

講演ビデオとblog


Part I エンタングルメントの実在の認識 — Bellの定理とCHSHゲーム ( blog )

エンタングルメントの実在の認識 -- CHSHゲーム-- ( video slide)

エンタングルメントの認識の難しさ -- 「局所性」について -- ( video slide)


Part II 「全能者」との対話で得られる認識 — Interactive Proof というアプローチ (blog)

「全能者」との対話で得られる認識-- Interactive Proof -- ( video slide)

対話型証明の最初の成功 ( video slide)


Part III  量子コンピュータの能力の認識 — 量子複雑性理論とBQPクラス」 (blog)

量子コンピュータの能力の認識 -- BQPクラス-- ( video slide)

量子優越性とは何か ( video slide)


Part IV 「エンタングルする知性」の認識 — MIP*=REの様々な解釈 blog)

「エンタングルする知性」の認識 -- MIP*=RE -- ( video slide)

MIP*=REの認識論的含意 ( video slide)

セミナーの関連資料

Part I   エンタングルメントの実在の認識
— Bellの定理とCHSHゲーム

Part II 「全能者」との対話で得られる認識
— Interactive Proof というアプローチ

Part III  量子コンピュータの能力の認識
— 量子複雑性理論とBQPクラス」

Part IV 「エンタングルする知性」の認識
— MIP*=REの様々な解釈